【コラム】私たちは熊本地震から何を学ぶべきなのか~序章(CWSJapan事務局長 小美野剛)

20160428_044月23日から熊本に入り、被災された方々、支援団体・関連組織、大学教授等の有識者と話をしてきました。まだまだ教訓を、という段階では無い事は十分承知しておりますので「序章」としていますが、現地からいくつかの課題も見えてきましたので、特に防災・減災日本CSOネットワーク(JCC-DRR)の加盟団体の皆さま、そして関係者の皆さまに共有したいと思います。限られた時間の中で限られた人にしかお会いしていませんので、全て網羅しているわけではありませんが、日本社会が抱える減災・防災の課題について、現時点での問題提起をしてみたいと思います。課題解決はもちろん可能ですが、このまま放っておけば深刻な事態になります。

JCC-DRRは課題を抽出するだけで終わらず、それを解決する有志が集まっていますので、将来の災害に向けてソリューション(具体的な解決策)を確立出来る事を確信しながら書いています。

まず、JCC-DRRの命題でもある「災害リスクをどのように削減できたか」について、いくつか要素があるように思います。第一は意識の問題です。皆さん口を揃えて「まさかここが被災地になるとは」と仰ってました。これはどの災害でも聞く言葉ですよね。いつ日本人は「想定内だった」と言えるのでしょうか。更なる啓発活動があらゆる場所で、あらゆるレベルで行われなくてはいけないと強く思います。知識や意識は行動に繋がる必須要素です。

20160428_01この度の地震では、家屋の倒壊や地滑り等で49名が尊い命を落とされ、13名の方々が震災関連死(まだ正式な判定ではありませんが)で亡くなっておられます。この犠牲をどう防げたのでしょうか。やはり、家屋の耐震化を率先して進めるべきでしょう。倒壊した家屋は歴史のあるものが多く、近代的な家屋は目立った外傷もないのが事実です。一時の投資で命を救い、将来の時を確保する。日本のような地震大国では耐震化は最優先で取り組むべきでしょう。

震災関連死はどうでしょうか。例えば車中泊を長引かせない為には、車中泊の避難者を出来るだけ迅速に把握し、空いている公営住宅や民間住宅に移す事が重要です。車中泊の人たちの把握が困難だと言われておりますが、ほとんどの人が携帯やスマホを持っているこのご時世、「支援を届けたいので居場所を登録してください」と行政が呼びかけ、新聞やラジオ、インターネットなどでキャンペーンをすれば、ある程度は把握できるのではないでしょうか。日本の企業はそういったシステムを作るのが大得意です。そうした仕組みを作ることのできる人を災害対策本部が上手く連携できれば、きっと迅速に構築してくれるでしょう。この点は災害協定の在り方を見直すのに有益かと思います。被災された方々からアプリなどを通じた情報提供があった場所について、外部支援団体との連携でローラー作戦を行えば、ある程度のデータの信頼性は確保できるはずです。こうした連携を平時から作っておくのも重要ですね。

20160428_02避難所間での、そして指定されてない避難場所への支援の格差も見受けられます。支援配布に関するシステム構築が平時から行われるべきではないでしょうか。各避難所からのニーズをリアルタイムで把握し、迅速に配送するシステムについては、各避難所に情報集約・発信を常時行う担当者を配置し、タブレット等で誰もが使いやすい仕組みにしておき、寄せられた情報及び対応状況をリアルタイムで誰でも見られるようにすること。これにより、情報のチェックと確認作業が機能します。また、支援の重複(ギャップ)が予想される部分は外部団体と連携を確認しておく。こうした取り組みを事前に構築しておき、行政・支援団体・住民皆が進捗を見る事が出来る透明性のある情報開示に努めていれば、支援の格差は自ずと解消されると思います。

20160428_03かなり複雑な問題が、復興です。生業も様々、場所も広範囲の災害では、「一つの解決策ですべて上手くいく(英語ではOne Size Fits Allと言います)という復興計画では意味がありません。しかし、それでも重要なのは早期に復興のビジョンを示す事です。熊本地震におけるビルドバックベターとは何を意味するのか、この方向性を県や市が示し、全てのステークホルダーと共有する事が何よりも重要です。東日本大震災の例を見ても、復興がある程度進んでいるのは復興のビジョンを明確に打ち出して、それによって一体感を作り出している所です。特に人口減少が著しい場所では、このようなビジョンを早期に打ち出し、共感を育み、外部のリソースをどう有効的に使うかが重要でしょう。

JCC-DRRは評論家集団ではありません。課題が見えたらその解決に向かって徹底的に取り組む有志のネットワークです。私もこの報告を単に書くだけでなく、今後、様々な方々と連携をしながらソリューション(具体的な解決策)を生み出す流れを作り出したいと思っております。将来の被災者を出来るだけ減らす為に、JCC-DRRの知見・経験・多彩な専門性をフルに活かし、有志の他セクターの方々と一緒に取り組んでいきましょう!

2016年4月28日
熊本にて
JCC-DRR共同事務局 小美野 剛(CWS Japan事務局長)