G7伊勢志摩サミット 活動報告 (JCC-DRRグリーンインフラ小委員会)

「質の高いインフラ」構築には、住民参加型の合意形成プロセスを

201606
G7伊勢志摩サミットの主要議題のひとつ、「質の高いインフラ」の実現のために、どのような視点を持つことが大切なのか。この問いに対して、市民視点の意見を提案するために、JCC-DRRグリーンインフラ小委員会から、一般社団法人プロジェクトリアス(気仙沼市)の三浦友幸さんが「市民の伊勢志摩サミット」(四日市市)並びにG7伊勢志摩サミットにおけるNGO記者会見(国際メディアセンター・伊勢フットボールヴィレッジ内NGOワーキング・スペース)に参加し、意見を発表しました。NGO記者会見は、JCC-DRR、ワールド・ビジョン・ジャパン、「環境・持続社会」研究センターの3団体合同で開催されました。冒頭、JCC-DRR事務局長の堀内葵より、国連持続可能な開発目標(SDGs)に含まれる防災・減災に関する目標を紹介し、「仙台防災枠組」とともに社会のあらゆる関係者が目標達成に向けた役割を果たすべき、と発言しました。

持続可能な地域づくりにつながる「グリーンインフラ」へ

JCC-DRRグリーンインフラ小委員会は、地域資源を活用し、地域社会の持続可能な発展を目指した「グリーンインフラ」を、防災・減災の観点から推進しようと活動しています。東日本大震災の被災地では、復興の名の下に多くのインフラ整備事業が実施されていますが、ここで非常に重要なのが、「グリーンインフラ」という観点を持つこと、そして、地域住民の合意形成への参加です。

グリーンインフラは、今後の人口減少社会における、有効な解決策とされています。地域の自然をいかした方法なので、一次産業や観光業など、地域の産業への負の影響を抑えつつ、また、維持管理費も抑えた運用管理ができることが注目され、政府の国土強靭化計画にもその需要性が明記されています。
そして、こういったグリーンインフラを活用するためには、地域に暮らす人々の意見を十分に汲み取り、その土地の風土や歴史文化にあった、地域の人たちが郷土への愛着と、その土地に暮らし続ける希望を抱き続けられることを尊重した、合意形成のプロセスが必要不可欠です。

三浦さんは震災後宮城県気仙沼市で「防潮堤を勉強する会」を市民有志により発足し、現在も地域の復興やまちづくりに携わる当事者の立場から、「市民の伊勢志摩サミット」分科会や記者会見を通じて、意見を発表しました。

サミット成果を一定評価。地域の声を尊重したプロセスの実現を

サミットの成果として「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則」が発表され、その原則4において「国家及び地域レベルにおける、気候変動と環境の側面を含んだ経済・開発戦略との整合性の確保、質の高いインフラ投資は、案件準備及び優先順位づけ段階からのステークホルダーとの対話を通じ、国家及び地域レベルにおいて、経済・開発戦略に沿ったものとすべきである」「生態系に基づいたアプローチやグリーンインフラの更なる推進なども通じ,気候変動への強じん性、エネルギー安全保障と持続可能性、生物多様性の保全、防災も、考慮に入れられるべきである」といった文言が盛り込まれたことは、歓迎すべきことと言えます。

一方で、インフラだけでは災害を100%食い止めることは不可能であり、「減災」の視点を持つべきであること、地域住民が合意形成プロセスにおける重要なステークホルダーとして位置付けられるべきであるということは、さらに強化すべきです。これは仙台防災枠組の「よりよい復興(Build Back Better)」、そして国連持続可能な開発目標(SDGs)の文脈に照らしても、重要なポイントと考えます。

G7伊勢志摩サミットは、主要国が集まるハイレベルの会合です。しかし、そこで合意されたことは、地域に暮らす人々にも、大きな影響を及ぼします。そのことを胸に、政府は私たち市民社会の声に引き続き耳を傾け、持続可能な社会の構築に向け、ともに歩みを進めることを希望します。

JCC-DRRグリーンインフラ小委員会